「爆破」や「祟り」を越えて|西宮・越木岩神社の磐座に寄せるご神職の思いがあたたかい
【 甑岩(こしきいわ)】
磐座を壊してマンションを建てる計画が進行中
西宮市にある越木岩神社所縁の磐座がマンション建設計画によって破壊されようとしています。
越木岩神社の境内奥には甑岩(こしきいわ)という大規模な磐座があり、古代祭祀から続く信仰の場として大切にされてきました。
今回、破壊されるかもしれないのは、その甑岩ではなく、境内の隣接地にある3つの磐座です。
大規模マンション開発で 爆破粉砕による 磐座イワクラがある こしき岩の写真 pic.twitter.com/oOwmbQIwAu
— やまのたろう@やむさい (@taroyamano) 2015, 4月 20
越木岩神社隣接土地のマンション計画により磐座破壊 http://t.co/lR2DexuSpk これが爆破されそうな磐座です pic.twitter.com/fNDysltGfW
— intellipunk (@intellipunk) 2015, 4月 22
神社や地元の人たちが守ってきた宮山(共有地)を戦後の厳しい時代、大学を設置するということであればと最終的に教育機関に譲渡しました。
その大学の経営難によって、第三者が購入し現在、3つの磐座以外は更地となっています。
いよいよ本格的なマンション建設の着工も間近のようです。
この情報がネットで広まるなかで状況も変わってきていますので、ここで越木岩神社の公式ブログを中心に参照しながら、整理してみたいと思います。
自分のなかの磐座情報履歴
第一報
磐座が破壊されるかもしれないというニュースを知ったのは4月15日、Facebookのタイムラインでした。
イワクラ学会の平津豊氏の投稿が初見です。
この神社の隣にマンション建設の計画があり、この建設によって、神社を見下ろす建物が出現することのみならず、隣の敷地内に残る磐座の破壊、伊勢遥拝所の視線の遮断などが行われようとしています。
読後すぐ、これは自分なりになにか出来ないかと、磐座 について初めて書いたのがこちらの記事です。
署名活動の展開
イワクラ学会
4月26日:イワクラ学会によって署名活動がスタートしたと知りました。
署名活動は現在、第一次締め切りを5月14日、最終締め切りを5月31日として受付中です。
change.org
4月29日:ソーシャルプラットフォームというchange.orgにて磐座の永遠の鎮座を祈る市民名義によるネット署名活動がスタートしたTwitterで知りました。
兵庫県西宮市越木岩神社宮山の磐座が 大規模マンション及び道路開発により 爆破粉砕されようとしています。 工事許可の撤回及び中止を求めるネット署名と拡散をお願いします🙏 https://t.co/6kbsc1UQwm
— やまのたろう@やむさい (@taroyamano) 2015, 4月 29
こちらも開始後24時間で500名の賛同が集まるなど、活発な動きを見せています。
全国的に心配な状況
越木岩神社の一件から全国で似たような事例が起こっていることを知りました。
下鴨神社のマンション建設計画や吉野ヶ里遺跡のメガソーラー設置をはじめ、神社や磐座、遺跡を取り巻く環境はますます厳しいものとなっています。
今回、神社や磐座を愛して大切にしようと願っている人たちが、自分の思っているよりもはるかに多く存在することに少しほっとしたのも確かです。
岩石を信仰していた日本人―石神・磐座・磐境・奇岩・巨石と呼ばれるものの研究―
ご神職のコメントが切なくてあたたかい
5月1日付の越木岩神社ブログで神社として今回の磐座に関する考えや情報の整理をされています。
(こちらのブログには、公式かどうかプロフィール欄も含めて明記はありませんが、越木岩神社のご神職が運営されていると推察します。)
このブログ記事で抑えておきたい点は、次の3つでしょう。
01.破壊されようとする磐座は越木岩神社の甑岩ではないことを改めて確認
越木岩神社で磐座と言えば甑岩という連想ゲームで、どうしてもあの境内にある磐座が壊されると思うのも無理はありません。
マンション計画も越木岩神社の境内ではなく、隣接地の夙川学院短期大学跡地が対象となっています。
神社の歴史的な経緯からその隣接地の3つの磐座も越木岩神社や地元の人々によって大切に守られてきました。
だからこそ、神社境内や甑岩と同じような目で3つの磐座を捉えて、何とか土地と共存できないかと心を砕かれていると感じます。
02.磐座が「爆破」されるかは不明で、表現として不適切
マンション建設計画のなかで3つの磐座のある場所の上に建物ができるというのは事実のようです。
ただ、爆薬を使って破壊するかどうかは神社としても事実として把握していないようです。
03.「祟り」という表現は敬神の念からも控えてほしい
古来から、神社や磐座を移動したり壊したりすると祟りが起こるという言説が言われてきました。
人々のなかにある人智を越えたものへの畏れが裏返しとなったのだと思います。
自分自身も何かの「祟り」というのは信じないというか考えません。
結局、人を裁くのは神様ではなく人間ですし、試練と祟りは違うものでしょう。
それすら人間の一つの見方でしか過ぎないものです。
越木岩神社に関わる神様は祟りを起こす神様ではなく、皆さんを見守り、幸せを与えて頂ける神様だからです。
この一言に尽きると思います。
ブログ記事の後半には、神社で生まれ育った筆者が、子供の頃に甑岩に登ってお父様に叱られた思い出が語られています。
岩の上は光に包まれてとてもあたたかな空間だったと鮮やかに記憶されているようです。
岩の上は光が差し込み温かい空間であったと記憶しています。(今は畏み・恐れ多くて登れませんが)神様は怒ることなく、まるで母のように包み込んでくれていたような感覚を覚えています。いつまでもここに居たいと思っていました。
磐座というものがただの石ではなく、大きな存在としてリアルに生きている感覚がこちらにも伝わってきて、目が潤んでしまいました。
神様も神社も磐座というものは先祖を敬って大切にするような感覚で見ていくことが大切だと思います。
ときに人々の成長のため、目覚めのため、 大きな試練を与えることもあるかもしれませんが、それを否定してしまうのはかえって敬うべき存在の意義を貶めることにもなりかねませんし、どう捉えるかは私たちの胸先三寸にかかっていることと思います。
だからこそ、守らないといけないものは守りますが、事実と違うような表現で人を怖がらせたり間違った情報や思いを抱かせることもしたくはありません。神社も地域の方も関心をお持ち頂いた方も開発業者の方々も、全ての方々がお互いを思いやり、また幸せになることを神様は望んでいるはずです。
ご利益も祟りもすべて超えたところに神様の思いはあると痛感します。
現実の問題として磐座の今後は極めて心配です。
それでも、この問題のおかげで神社や磐座がなぜ大切にされてきたか、わずかでも理解できたような心地です。
- 作者: アスペクト編集部
- 出版社/メーカー: アスペクト
- 発売日: 2011/04/25
- メディア: 単行本
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (7件) を見る